照明性能設計からの計画による省エネの紹介です。
丁寧な空間分析から人の行為にもとづいた計画を行うことで実現してきました。

ぼんぼり光環境計画における省エネルギーの考え方

ぼんぼり光環境計画は、建築、住宅、駅前広場、道路、都市空間などを対象として、光を用いた環境設計を行います。省エネルギー設計は、単に照明器具の消費電力を小さくするのではなく、空間の使われ方や人の行動を分析し、必要な場所に必要な光だけを配置することを特徴としています。

省エネルギーの基本的な考え方
一般的な照明計画では、空間全体を一定の明るさにすることが多い。しかし、人が歩く場所、立ち止まる場所、案内表示を見る場所など、実際に人の行為に基づいた明るさが必要な場所は限られている(歩行性能、危険予測照明)。
「ぼんぼり光環境計画」は、利用者の行動を調査し、場所ごとに求められる照明性能を整理する「照明性能設計」を行っています。
一律に照らすのではなく、人の行動を基準として光を配置する設計手法です。

均一照明 部分照明
左:床面照度を均一に効率よく確保するため、天井には均等にダウンライトを設置している
右:床面照度ではなく、空間要素と人の行為に合わせた照明



通常の照度確保
JIS基準など従来の照明は床面全体を極力均一に照度確保することを目的としています。

道路照明設置基準・同解説 道路照明施設設置基準・同解説(日本道路協会)
歩行者に対する道路照明の基準(JIS Z9111-1988 歩行者に対する道路照明の基準(JIS Z9111-1988)
防犯照明(日本防犯設備協会) 防犯照明(日本防犯設備協会)
出典:日本街路灯製造株式会社

これら照度基準の問題点がいくつかあります。
まず第一に、日本中の道路、歩道の分類があまりにも少く、 特に歩道関係は交通量の違いと住宅地か商業地域かによる2×2の4種類しかありません。 なので、歌舞伎町と地方の駅前の商店街などは同じ基準を採用することになっています。
また、防犯灯に関しては、より防犯性が高いのがクラスAとなっているが、街路周辺の環境に関しては説諭してなく、特に時間帯、その環境条件によってどれだけ犯罪が発生しているかも記されていないません。
ただ、照度分布図によって容易に判断できるため、照明設備の計画は比較的容易であり、必要最低限の明るさを確保することができます。

道路照明 道路照明
一般的な道路歩道照明は路面が均一に照明されている。
その為、まち、景観でなく、道が目立っている。


「照明性能設計」の可能性
必要な場所・時間に必要な光だけを使うことから、通常の照度基準と比較して、飛躍的な省エネが期待できます。

主な省エネルギー手法
●人の行動に合わせて照らす
歩行、乗り降り、休憩、案内表示の確認など、利用者が行う行動を分析し、それぞれの行為に必要な場所へ適切な光を配置する。これにより、空間全体を均一に照らすのではなく、歩行性能や危険予測に必要な照明性能を効率的に確保できる。 また、防犯性については、単に顔が見えるほど明るくすることを目的とするのではなく、人の存在や周囲の状況を認識しやすい光環境を形成することを重視している。犯罪は照度だけで決まるものではなく、周囲から見通せることや隠れ場所が少ないことなど、空間全体の環境が大きく影響するためである。犯罪者は「隠れられる場所があるか」「逃げられるか」が犯すポイントとなる。

●空間認知を確保する
空間全体の照度を高めるのではなく、人が空間の構成や進行方向を認識できることを重視する。そのため、壁面や建築物の境界、ボイド部などの空間の輪郭を示す照明であるボイド照明、ボーダー照明や、目的地へ自然に誘導する誘導照明を効果的に配置する。 このような照明計画により、必要以上に明るくしなくても空間の把握が容易となり、安全性と省エネルギーを両立することができる。

●時間帯に応じて照明を制御する
駅前広場などでは、利用者が多い時間帯と深夜では、必要とされる明るさが異なる。利用者が多い時間帯は人の目があるため犯罪は比較的少ないが、終電後から深夜にかけては人通りが少なくなり、犯罪が発生しやすくなる傾向がある。そのため、犯罪リスクが高い時間帯と低い時間帯に応じて照明の明るさを調整している。 また人の気配、「生活のあかり」によっても人を感じることから防犯性に有効である。


時間帯による人の多さと危険度
時間帯による人の多さと危険度

人を感じる住宅のあかり 人を感じる住宅のあかり
人を感じる住宅のあかり

●危険な場所(交差点)だけに光を集中させる(交差点の危険予測照明)
「全部を明るくする」のではなく、「危険予測照明」は交差点に進入する車から、車道や横断歩道付近の歩行者の状態をより早く認知することにより、歩行者との交通事故を少なくすることがでる。

交差点の危険予測照明 交差点の危険予測照明
交差点での危険予測照明は警察の承認が必要。
神奈川県警、静岡県警、山梨県警、埼玉県警、群馬県警、宮城県警、富山県警、警視庁と協議承認してきた。


●実験によって必要な光を確認する
照明計画は設計図や照度計算だけで決定するのではなく、現地で照明実験を行い、光の方向、照明器具の位置、照度などを確認しながら最適化する。 特に、空間認知を重視する照明では、空間全体を明るくする必要はなく、境界部やコーナー部など、人が空間を認識するために重要な部分へ適切な光を配置することが重要である。
このような実証実験を行うことで、必要以上の照明を削減し、省エネルギーと快適性、安全性を両立した照明計画を実現している。


TBS 一ツ木公園連続エリア照明社会実験 大洗まちあかり 照明確認


各所の事例
池袋グリーン大通り 池袋グリーン大通り
・池袋グリーン大通り(歩道整備)
終電前は最低限の照明。終電後は照度基準確保。
照明性能要素:歩行性能、危険予測照明、誘導照明、オペレーション
通常歩道照明と比較して1/3の省エネを実現

西参道道路整備 西参道道路整備
・西参道道路整備
道路照明は行っていない。歩道部の人が認識されることを優先した。
照明性能要素:歩行性能、危険予測照明、誘導照明
通常歩道照明と比較して1/8の省エネを実現

気仙沼内湾全体計画 気仙沼内湾全体計画
・気仙沼内湾全体計画
内湾全体を整備管理境界を無くし、全体空間として照明計画を行った。
特に建物周りでは、暗闇を無くす防犯照明を採用し、
前面歩道部の歩行性能は確保している。
照明性能要素:歩行性能、危険予測照明、誘導照明(高台避難)、ボイド照明、ボーダー照明
通常歩道照明と比較して1/7の省エネを実現

・越中八尾駅歩道
越中八尾駅歩道 越中八尾駅歩道
左:既存商店街灯 右:整備後
既存の商店街灯を止め、電柱にLED5Wを設置。
照明性能要素:歩行性能、危険予測照明、誘導照明、ボイド照明
通常歩道照明と比較して1/20の省エネを実現

・越中八尾禅寺橋(照明実験)
越中八尾禅寺橋(照明実験) 越中八尾禅寺橋(照明実験)
左:照明実験風景 右:既存照明との比較
照明実験を行った。越中八尾ではこの歩道橋が一番明るい。
最低限、人がちゃんと歩ける照明を設置した。 照明性能要素:歩行性能、誘導照明
既存歩道照明と比較して1/130の省エネを実現

・某オフィスビル廊下
スカイパーフェクトTV スカイパーフェクトTV廊下間引き点灯
間引き点灯時を想定して、空間認知を促進するところの天井に照明を設置。
実際、人が歩くことができればよいので、間引き点灯の状態が日常使われいる。
照明性能要素:歩行性能、誘導照明
既存歩道照明と比較して1/3の省エネを実現

・かみす防災アリーナ
かみす防災アリーナ かみす防災アリーナ
空間に設置されたファニチャーに照明を設置。 人が集まったりする場としての演出的な意味も持つ。 これらのあかりの連続にて歩行性能を確保した。 照明性能要素:歩行性能、誘導照明
既存歩道照明と比較して1/6の省エネを実現

その他 ・甲府駅前広場
・富山駅前広場
・上州富岡駅周辺
・草薙駅広場+東西自由通路
・大洗町まちあかり
などで実施


照明性能計画により必要とされる照明を考慮したのであり、すべての建築や都市空間で同じ削減率になるとは限らない。

省エネルギー以外の効果
必要な場所だけを照らす設計には、電力削減以外にも次のような効果がある。
• 建築物や地域の景観を生かすことができる。
• 利用者が入口、通路、段差などを認識しやすくなる。
• 夜間のまぶしさを抑えられる
• 照明器具の台数や維持管理費を削減できる可能性がある。


まとめ
ぼんぼり光環境計画の省エネルギーは、照明器具を単純に減らす方法ではなく、人の活動、時間帯、空間の特徴を分析して、必要な光を適切に配分する方法である。 特に重要なのは、空間全体の明るさを上げるのではなく、「どこを、いつ、何のために照らすのか」を明確にすることである。この考え方により、安全性や快適性、地域の景観を守りながら、照明に使用するエネルギーを削減できる。 したがって、ぼんぼり光環境計画の事例は、省エネルギー照明とは単に暗くすることではなく、光を必要な場所へ効果的に届ける設計であることを示している。


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