6.「虹窓」は環境投影装置
仮に当時の人々の美に対する感覚の一つとして「虹窓」なる現象が芸術的に証明されたとしよう。するとどうだろう、お茶室等の建築物を保存する事は環境をも保存するという事になる。すなわち環境を守るという事はお茶室の窓から見える世界を当時のままに維持する事であり、緑を切ったり、はたまた空を隠すような建築物が近くに建設する事は許されないはずである。私の知る限りでは「虹窓」のような視点で評価している例は見たことがない。実は「虹窓」的な現象を利用したお茶室は至る所で存在している。「虹窓」は障子の部分で環境の光を分解して私たちに見せてくれれる。またある茶室では窓それぞれから入り込む光の色が違っていて、点前座の後ろの窓からは白壁から反射した白い光、その横上の窓からは空の青い光、それらが絡み合い点前座の亭主を自然の光によって巧みに演出してた。亭主を照明する各窓による手法についてはある程度調査されているが、その窓から入り込む光の質自体を述べた所見は無い。美と作法を極めた茶道文化に「光の彩り」の概念が存在していたことは確かである。ただ悲しいのは、現在の私たちはその微妙な光の色の変化を見る目を失っているのである。
「虹窓」を守る事は環境を守ることであり、一度失った環境は取り戻すことができない事を再認識する必要がある。